Red Velvet『Bad Boy』の世界

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今回は Red Velvet の初レビューだ。

これまでのRed Velvetに無い、メロウなビートに合わせた落ち着いた曲調。
目立った部分はないが、リラックスして聴くのに適している事もあって中毒性とは異なる意味でリピート率が高い。

タイトルは Bad Boy だが、歌詞にもMVにも、明確に「男性」をイメージできるような「相手」や「主人公」の描写は登場しない。
一方、MVでは一曲を通して見逃せない意味深なシーンの連続だ。

この記事では、MVが意味する内容を、仮説として紹介したい。

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無邪気な少女と悪女 – Bad Girl

 

制服のシーンからビデオは始まる。
この服装が意味するのは、青春、純粋、無邪気さ、そして大人への成長過程だ。
しかし、彼女たちが身につけているのは、そういったイメージを連想させるものではなく、網タイツやショート丈など、垢抜けた、スタイリッシュな、都会的なものだ。

また、服を着ていながら浴槽に入っていることに加え、水や湯が入っていないため、一見意味のない行為のように見える。

さらに、浴槽がある部屋にもかかわらず雪が降っているが、降っているように見えて上っている。

風呂は、服を脱いで入るものである
風呂に入るというのは、湯などに浸かることである
風呂がある部屋には、屋根があるものである
雪は、空から降ってくるものである

といった、常識を打ち砕いているシーンだ

これは唇ではない

これは唇ではない

何気なく登場する本。
表紙に書かれている文字に目が行く。

厳密には文法が違うようだが、「これは唇ではない」と読めるらしい。

しかしながら、表紙に描かれているのは唇の絵だから、混乱してしまいそうになる。

『Ceci n’est pas une pipe(これはパイプではない)』を模しているメッセージのようだ。

これはパイプではない

矛盾しているように見えるが、絵はイメージであって、実体ではない

絵は、それが実在するモノや概念をリアルに映し出すように錯覚させる。
人々は、パイプの絵を見て「パイプの絵」と思う。
しかし、それはパイプではなく、パイプを模したイメージでしかないのだ。

MVでは、男性的なアイテムであるパイプではなく、女性を連想させる「くちびる」に差し替えている点は示唆的。
『画面の中や写真で見ることができる、エロティック、セクシー、キュート、魅力的…そういった女性に対するイメージは、その人物そのものを表すわけではなく、実体でもないのだ』 というメッセージを思わせる。

一つの例として、Red Velvetのミュージックビデオを通して我々が見ているものは
彼女たちの全てではなく、あくまで一部を切り取ったイメージでしかない。

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変容

タイプライターのキーを押した途端、イエリは垢抜けた姿になる。
見方によれば Bad Girl ペルソナ的イメージへの変身だ。

もしタイプしているキーに意味があるとすれば、彼女は「V」を押しているので、そこから連想できるのは Ctrl+V、つまり「貼り付け、ペースト」のコマンド。

若い女性・少女が本来持っている天真爛漫な姿や無邪気さに、通俗的な観念、心理的操作、広告、煽動…などの外的要因(=刺激)が加わり、ある種の順応(自分で「貼り付け」る)によって、アイデンティティが変容していくさまを表しているように見える。

ところで、「V」をタイプした人物のツメをよく見ると、イエリ本人の指ではないようだ…(上の画像の3カット目でイエリの右肩に乗っている手の主は…)

 

ユニコーンは純潔の象徴、虹色はレズビアンやバイセクシャルを意味することがあるようだが…このシーンの真意を解釈するのは困難。

 

寝ている時のフェミニンな服装とは対象的なダンスシーン。

後ろで立っているマネキンに意味があるとすれば、
理想的な体型
女性らしさの基準
などの固定観念としても捉えられる。また、ケースが台車で動くようになっている様子から、流動的なイメージをもたらしている。
その前で彼女たちが踊っているさまは、なんとも言えない皮肉を感じる。

マネキンたちは後のシーンで破壊される。

極寒の地、道路、ベッド

Bad Boy - ベッド

相容れないイメージの組み合わせには、何らかの意図が見え隠れしていることが感じ取れる。

氷山や雪は凍える寒さを、
ベッドは安心感や心地よさの印象を与える。これは対比になっている。

先に続いている道路は動的な印象を、
ベッドは静的な印象を与える。これも対比と見てよさそうだ。

 

ベッドの上には、ジョイの姿がない。これには何らかの意味があるのか。それとも深い意味はないのか。

この部分の解釈としては、ジョイ自身の視点(または夢、空想、回想)という見方と、スルギが発砲した相手がジョイだった(ストーリー上で、ジョイは死んでしまった)という見方ができそうだ。

白紙の本

5人がテーブルを囲んで本を読んでいるシーンに見えるが、よく見ると手前の二人の本は白紙だ。
また、ウェンディが持っている本の表紙にだけ「これは唇ではない」のテキストと唇の絵がある。

ウェンディ以外の4冊は、「これは」の対象が描かれていないので、
「これ(本)は唇ではない」
つまり、読んだとおりの真実を言っているだけの状態となっている。

本は知識を象徴するアイテムだが、中身の本質は空虚かもしれない。
冒頭の「パイプ」 「くちびる」 に近いことを表現しているように見える。
ただし、この白紙の本については、警告しているようにも捉えられる。

燃えるカメラ

カメラを燃やしているシーン。

カメラは、現実の一部分をイメージとして切り取る道具だ。
「くちびる」 「マネキン」 で象徴されていた、固定観念を燃やしている
これは、一種の警告のようにも見える。

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破壊

Bad Boy - 破壊

工具やスプレーなど、不良(Bad Girl)のイメージで連想しやすいアイテムを持っていて、実際に破壊行動をとっているシーン。

Bad Boy - 破壊

人には、表向きの性質以外に想像もつかない一面が隠されていることがある。
また、イメージだけで人を判断したり、評価するのは軽率だ。

番外編

MV撮影中のインタビューでは、
「昨日(の撮影)は悪い女の子を演じましたが、今日は純粋な女の子です。こんにちは!」と話している。

Bad Boy

印象的な氷山のシーンは合成ではなかった。

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