アルバム『LOVE YOURSELF 結:Answer』は、
他者への愛、別れ、そして最後に自分自身への愛に続くストーリーを描いた、LOVE YOURSELFシリーズの仕上げとなるアルバムになりました。
トラックリストを見れば、起承轉結の順に関連曲を並べてあることが分かります。
今回はその「起承轉結」に関して振り返りをしてみます。
Euphoria
君は僕の人生に再び昇った日の光
もしかしたらここも夢の中なんだろうか
僕の手をとってくれ
この幸福感の理由は君なんだ
出会いの曲です。
これまでのBTSの活動の結果として『LOVE YOURSELF 起: Wonder』というアルバムが出ていない(または出ないことになった)ので、「起」アルバムのイントロではなく、今回の「結」アルバムでストーリーラインを表すうえでイントロになりました。
「再び」「ここも」など、既視感やを匂わすワードがさりげなく盛り込まれている点に注目です。
Trivia起:Just Dance
J-Hopeのソロ曲。
一緒にいるこの感じが好きだ 君と
一緒にダンスするのが好きだ 君と
愛の始まりを予感させる、無邪気さが感じられます。
Serendipity
ジミンのソロ曲。
『LOVE YOURSELF 承 “Her”』の導入となっていた曲です(Intro:Serendipity )。
「君は僕のアオカビ※1」や「僕は君の三毛猫※2」など、歌詞にも一風変わった比喩表現がみられます。
内容は『DNA』と同様に、いかにして自分と相手が出会ったのか、出会うべきだったのか、出会う運命にあったのかを確認し、強く胸に刻んでいるような内容となっています。
※1 ペニシリンの原料
※2 基本的に三毛猫の性別はメスであるが、ごくまれにオスの三毛猫が産まれることがある。その希少性は3万匹に1匹程度とされる。(wikipedia より)
Trivia承:Love
RM のソロ曲。
3曲の「Trivia」のうち「承」を担当。巧みな言葉遊びが特徴的。
僕はただの人、人、人(サラム)
君は僕の角を全て取り除いてくれて僕を 愛、愛、愛 (サラン)
で満たしてくれる
Trivia轉:Seesaw
シュガのソロ曲。
3曲の「Trivia」のうち「轉(転)」を担当し、歌詞も同様に別れについて歌っています。
正確に言えば愛がすでに停滞した状態で、互いに終わらせようとしてはいるが顔色を伺っている状況であり、この二人の関係をシーソーに例えた曲と言えます。
そろそろうんざりしてきた
繰り返す Seesaw Seesaw game
俺達はお互いに疲れて嫌気が差すようになった
シュガによる、ラップ以外の歌唱を聴くことのできる珍しい曲です。
Epiphany
ジンのソロ曲。
ティザー公開時は、これまでの例からアルバムのイントロになると考えられましたが、アルバムがストーリーの回顧コンセプトを含むため、必然的にトラックリストの終盤である13曲目に配置されることになりました。
僕は 僕が愛するべきなんだ
輝く僕を 大切なこの魂を
今になって気づいた
少し足りないところがあっても 美しいから
MVの最後ではナレーションの代わりに字幕が入っています。
自分自身を探す旅の終わりに辿り着いたのは 元の場所
結局、探し出さなければならないのは全ての始まりであり
道しるべであった魂の地図
誰にでもあるが 誰も探す事が出来ないもの
それを僕は 今から探してみようと思う
後述する、LOVE YOURSELF Highlight Reel の振り返りも併せて確認し、ご自身の解釈を考えてみてください。
I’m Fine
『花様年華 Young Forever』に収録されていた『Save ME』を参照する歌。
かなりテンポが速く、ドラムンベースというジャンルを選択したという点でBTSの中では珍しいといえます。
※個人的には、ドラムンベースで思い浮かぶ J-POPは、RIP SLYMEの『JOINT』です。ドラムンベースってなんだ?という方は後で試しにテンポ感やパーカッションの雰囲気を聴いてみてください。
歌詞は『Save ME』の逆を行きます。
「別れ」を思わせるようなフレーズがいくつも出てきます。
その手を差し伸べて
僕を救って (save me)
堕ちてしまう前に、君の愛が欲しい
– Save ME より
大丈夫さ 俺だけが俺を救えるから
君はどうしているだろうか 俺は平気だよ
– I’m Fine より
僕の鼓動を聞いてみて
勝手に君に呼びかけてる
– Save ME より
冷たい僕の心臓は
君を呼ぶ方法を忘れてしまったけど
– I’m Fine より
Answer:Love Myself
起承轉結シリーズの仕上げとなる曲。
難しい比喩などはほとんど無く、歌詞それ自体がメッセージとなっています。
多分 誰かを愛することよりも
難しいことは 自分自身を愛すること だと思うんだ悲しんだ自分
苦しんだ自分
そうさ その美しさがあることを知っている心が
自分の愛へと向かう道昨日の僕 今日の僕 明日の僕
一つ残らず 余すところなく 全てが僕なんだ
LOVE YOURSELF Highlight Reel 振り返り
「LOVE YOURSELF Highlight Reel」映像シリーズは、「LOVE YOURSELF 起承轉結」シリーズの設定やコンセプトを表現する連作ドラマ作品となっていました。
それぞれの作品で挿入されたナレーションを思い出してみましょう。
個人的な解釈が入りますのでご了承ください。
LOVE YOURSELF Highlight Reel ‘起’
時間が経つほど 鮮明になる瞬間がある
この瞬間のために数多くの出会いと別れが存在して
ある路地、ある交差路を過ぎても
結局、ここにたどり着くのだと信じるようになる、そんな瞬間
電車が走る様子は、時間の経過のメタファーと考えられます。
つまり、すべてがここから始まったのではなく、このシーンの時点で、以前の何らかの物語からすでに時間が経過したところから始まっていることを意味していたのかもしれません。
なぜ、シリーズが「起」からではなく「承」から始まったか。イメージがわいてきました。
LOVE YOURSELF Highlight Reel ‘承’
にわか雨のような蝉の声が鳴り止み
不意な静けさの中で 僕は世界がどれだけ美しいのかに気づく
君がいるということだけで
全てが変わって見える
この瞬間が嘘だとしても ここに留まっていたい
気づいた、のではなく、気づく。 過去に終わったことではなく、また今回も繰り返し気づくのです。
何故だろう
一番幸せな瞬間に突然恐ろしくなるのは
自分は、何かを知っているか、気づいているのです。
LOVE YOURSELF Highlight Reel ‘轉’
僕は知っていた。
目の前に広がる輝く世界
その下に偽りがあることを
このすべてが、小さな風で崩れてしまうような夢だったことを僕は無視して、避け、目をつむった
恐ろしかった
愛される自分などなかった
幸せの絶頂と思われた瞬間に、違和感に近い既視感。既視感に近い違和感。
すでに何かが狂い始めていることに気づいている自分がいる。
また、そうなることを知っていた自分がいる。
例のショッキングなシーンの直後のこの表情。
目の前の瞬間についての悲しみや驚愕というよりは、これを「すでに分かっていた」こと、そしてすでに分かっていて恐れていたことが「やはり起きてしまったこと」を目の当たりにした、絶望的な表情なのではないかと僕は推察しています。
LOVE YOURSELF Highlight Reel ‘起承轉結’
もし時間を戻せるとして、一体どこに戻ればいい?
その場所に行き着けば、過ちや間違いはすべて無かったことになるのだろうか?
幸せになれるのだろうか?たくさんの季節が過ぎても、辿り着けない場所がある。
結局、僕が向き合わなければいけないのは
もう一つの嵐の中を突き進んでいくこと。
恐れることなく愛すること。
ためらいと決別すること。ただ僕として生きていくこと。
以前記事にした、RMによる『Answer』アルバムの解説において、『Trivia 承 : Love』のところで言っていた「古びた未来」の話のように、そもそもこの「起承転結」というのは「結」で物語が終わるのではなく、起承転結を繰り返しながら生きていくんだという事を言っているんですね。
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